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花冷え

この数日暖かい日が続き、油断をしていたら風邪気味になり、慌てて市販の風邪薬を飲んでことなきを得た。

その間、隣人タイ・ウェンさんが急遽アメリカに帰国することになったので我が家で遠方の友人も呼んで「サヨナラパーティ」を開いた。タイさんがその方面では有名な生化学者であるということを知ったのはタイさんと話をするようになって、2年ほど経ってからだった。それまでは、近所の研究所に勤めているアメリカ在住のベトナム人で、とても気さくで親切な方という認識しかなかった。彼といろいろ話すようになってから、10代の彼がベトナム戦争を契機に大変な思いをして、アメリカに渡りアメリカの大学で生化学を学び博士号を取得した経緯を知ったのだ。

「サヨナラパーティ」で、「私は昔からボーダレスよ」と言った私の両手をタイさんは強く握り、「ぼくもそうです!」と応えてくれた。後になればなるほど記憶の底から甦ってくる場面になるな、とそのとき感じた。

この日、私はいつもより少し薄着でワインもたくさん飲んだのだが、みんなが帰ってしばらくするとくしゃみが出はじめた。まさに「花冷え」、その前の日に訪れた、タイさんの部屋の窓からは、窓を額縁に斜面の満開の桃畑が見えた。タイさんは日本語で「美しい!」と言った。

思えば、美しいものと、そうでないものがせめぎ合っていたこの数週間であった。

2009年3月24日

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